田中 健一朗助教のインタビュー

田中 健一朗助教

超高齢社会に必要なリハビリテーションとは?

健康のために運動は欠かせないが,一人ではなかなか取組みにくいもの.理学療法士がサポートしながら,地域と人,人と人を繋ぐ事業が健康寿命に貢献しています.

どんな世の中を願いますか?

人生100年時代. 70歳からのQOLが高まりますように

個々に合った運動を

高齢になると徐々に身体機能が落ち,健康な状態から要介護状態へと進んでいく.筋肉量が減り筋力が低下する「サルコペニア」や様々な疾患の引き金となる心身の衰弱状態「フレイル」を防ぐためにも,近年,高齢者サロンに運動を取り入れる自治体が増えてきた.杵築市もその一つであり,理学療法コースの田中健一朗先生が研究の一環として支援,そして効果の検証を行っている. 今から3年前,杵築市内で開かれる高齢者サロンの63%が運動を取り入れておらず,事業はそこに通う高齢者を対象に始まった.まずは筋肉量や握力,バランス機能や歩行スピードを測定.さらに栄養状態や生活機能を把握するために生活スタイルの問診も行う.そして,モチベーションと評価指標になる目標設定ができたら,杵築市オリジナルの「きつみん体操」をスタート.加えて個々に必要な体操を1~2個指導する.「料理がしたい人には上肢の運動を,旅行に行きたい人には下肢の運動を.一人ひとりと向き合い,ときに勇気づけながら身体機能の維持や改善を目指していきます」.課題は,運動が嫌いな人の心をどう動かすか.例えば音楽に合わせて体操をするなど,運動することが「楽しい」と思えることが運動継続の条件らしい.

▲バランス機能を測定する田中先生.医療機関や福祉施設の臨床現場から地域社会へフィールドを移し,理学療法士としてハイブリッドに活躍

地域ぐるみで高齢者を見守る

コロナ禍でサロンに集まれない時期にも地元のケーブルテレビで体操を放送したところ,3カ月後の継続率は95%と高水準だった.1年ごとに評価を続ける中で,身体機能を維持できている人,また歩行スピードが速くなった人もいるそうだ.「サロンに通うようになって近所の人とよく話すようになった」「相談できる人が増えた」と言う声も上がっている.「高齢だからとあきらめずに運動をしてみると身体機能が上がり,願望が生まれてさらなるモチベーションに変わります.健康と要介護の間にいる人たちは,関わり方次第で健康に長生きできるのです」.なお,この取組は市の保健師や地元の理学療法士,作業療法士らと連携.要介護のリスクが高い人,食事の栄養状態が気になる人など不安要素が見つかった場合は保健師等とも相談し,病院や福祉施設に繋いでいる.すでに超高齢社会に突入している日本では,こうした地域ぐるみの継続した活動が重要なのである.

▲住民が主体的に取り組むことが重要

▲「血圧は知っていても筋肉量は知らない人ばかり.測定は気づきになる」と田中先生

▲個々の状態に見合った運動指導や生活スタイルの見直しを提案するため,対話を大事にしている

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