インタビュー
渡辺 亘教授
私の専門は,臨床心理学で,その中でも,心理療法やカウンセリングの領域です.
消去法です(笑).数学は苦手でしたし,法律や経済も,学校の先生になるのもピンとこなくて.入口はそんな感じで,入学後もあまり真面目な学生ではなかったので,同級生からしてみたら「大学の先生をしているの?!」と驚かれるかもしれませんね.ただ,そうは言っても人の心に関心はあり,心理学は面白そうだなと思っていました.
転機は大学院に進学して,さまざまな心理療法やカウンセリングに携わるようになったことでした.きっかけを与えてくれたのは子どもたちです.子どもの場合,遊びによってカウンセリングをするのですが(遊戯療法),その中で子どもが元気になっていくのを目の当たりにして,どんどん 専門的な領域にのめり込 んでいきました.
大分大学では,2000年から臨床心理士の資格取得に向けたカリキュラムをスタートしました.その 学内実習機関として,2004年に心理教育相談室を創設したんです.医学部で例えると附属病院のようなものですね.ここには一般の方がカウンセリングに訪れますので,その中で臨床心理士を養成してきました.その後,2015年に資格が 誕生した公認心理師も育 てることになり,福祉健康科学研究 科の開設にあわせて心理教育相談室を現在の臨床心理教育センターに拡充させました.
全国の大学に同様の相談室がありますが,当センターの相談件数は全国的に見ても多く,社会に必要とされていることを 肌で感じています.中でも小,中,高校生が多くを占めており,学校での悩みを抱えて親子でいらっしゃるケー スも少なくありません.大人の方の場合,仕事や家族,生き方についてなど,相談内容は幅広くなってきます.
心理療法やカウンセリングは,「してあげる」「してもらう」という一方通行なものだと思われがちです.しかし,私はそれではダメだと思っています.実際,心は十人十色.カウンセリングをする側も,される側も,一緒に共同作業で心の作業をしていくことが大切です.そういうことができる人材を育てたいですね.また,心理学の世界にも流行り廃りがありますが,それはそれで勉強しながらも,流行にとらわれることなく自分で考えることができる足腰の強い専門家になってほしい です.
真面目で素朴な学生が多 いです.昨今はたくさんの科目を受けなければならないの で,学生たちは我々の時代に 比べて忙しく,少しかわいそうな気もしています.だからこそ,吸収したものを自分の中 で消化し,考える時間をつくらないと,自分の足で立てな くなると思うのです.
自分も子どもっぽいせいか,我が子と遊ぶ時間がいちばん楽しいですね.時間があるときには,バイクにも乗っています.
福祉健康科学部では,多くの専門的な資格取得に向けた勉強ができますが,それだけがすべてではありません.今日ではこころ・からだ・くらしに関する多様な課題と向き合うことが求められますが,このとき大切なのは,何が本当に大事なのかを考え ることです.福祉健康科学部・福祉健康科学研究科では,そのために魅力ある教育体制を整えていますので,たくさんの方に 関心をもっていただけると嬉しいです.