中里 直樹准教授のインタビュー

中里 直樹准教授

どんな世の中を願いますか?

お互いを慮りつつ,個々の自由を押さえつけない社会

良好な人間関係が鍵?

ウェルビーイング(well-being)を逆に読んでみると,「Being well」.つまり「良い状態であること」.中里直樹准教授によると,「個々人が自身の価値観に基づいて,自分の人生が良い状態かどうかを判断することが大切だ」と言う.「主観的ウェルビーイング」という考え方である.ウェルビーイングとは,古くから哲学者たちによって考察されてきたテーマだ.心理学の分野で取り上げられるようになったのは,1980年代.イリノイ大学のエド・ディーナー博士が主観的ウェルビーイングと「人生満足度尺度」を提唱したことに始まる.図1の5つの質問に,まったく当てはまらない(1点)~非常に当てはまる(7点)の7段階で回答し,その総合点が高いほど満足度が高いというもの.これがウェルビーイングな状態の指標とされているのだ.
実は,日本人のウェルビーイングは経済力に比べてそう高くないと言われている.その理由を突き詰めていくのが,中里准教授の主な研究テーマだ.「よく,どうすれば満足度を上げられるのかと聞かれますが,まだ分かっていないことも多いんです.しかし,私の研究の中から言えることは,もっと自分が自由に生きられるような人間関係を築いておくことがポイントになるのではないかということです」.
日本では伝統的に調和的な人間関係が重要視されてきたあまり,周囲の目を気にしすぎて自分らしく,自由に振る舞えない傾向が根付いている.周りの人間関係に配慮することも大切だが,集団から排除される不安を必要以上に気にしすぎると,自分の目標を達成できないかもしれない.ある程度自由でいるための良好な人間関係とは,プラスの影響を与えてくれる人たちとの付き合いだ.

地域に根ざした研究も

「日本人全体のウェルビーイングを今すぐ向上させることは難しい.それにコロナ禍という新たな課題も生まれています.しかし,日本が今抱える問題と真摯に向き合っていくことが第一歩ではないでしょうか」.
自由度の重要性を考える中で,社会的な規範やルールとの兼ね合いも研究の焦点の一つ.例えば,地域社会に残っている保守的なしきたりが暮らす人に合わなければ,ウェルビーイングは低くなってしまう.そこで中里准教授は,地域の特徴と人の特徴を調べていけば,移住者と地域のマッチングにも応用できるのではないかと考えている.「大分に根ざした研究も進めていきたいですね.解き明かされていないことが多いだけに,研究のし甲斐があります」. 

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