平原 弦さんのインタビュー

平原 弦さん

医療法人至誠会帆秋病院

今のご職業に就こうと思ったきっかけは何ですか?

まず,心理学を学ぼうと思ったきっかけは,単純に面白そう,人は何を考えて生きているのだろう,という興味本位な理由からでした.心理職として働きたいと本格的に考え始めたのは大学進学後です.特に興味を持った領域は,緩和ケアなどの終末期医療でした.死に向かっていくクライエントが,どのようなこと思っているのか,心理職としてどのような支援ができるのか,と厳しい状況に置かれたクライエントの内的理解や支援について,初学者ながら分相応にも興味を抱いていました.そのため,元々医療領域には興味を持っており,大学院での医学部実習などを経て,死に向かっていくという終末期医療とは異なる状況でも,精神科医療にて厳しい状況に置かれたクライエントは多くいると目の当たりにし,その支援に携わりたいと考え,現在の所属先に就職を希望しました.

詳しい業務内容を教えてください.

大きく分けて,カウンセリング,心理検査,集団精神療法の運営の3つが挙げられます.カウンセリング,心理検査について,当院は色々な疾患や症状を持つ患者様を対応しているので,年代で言えば,思春期から老年期,症状で言えば,発達障害,人格障害,認知症など,多くのケースを担当させてもらっています.その中でも,発達障害の鑑別やカウンセリング,認知症の精査,知能検査の実施が多くを占めている状況です.
 集団精神療法については,アルコール依存症者対象の,アルコール・リハビリテーション・プログラム(ARP)の運営をしています.当院オリジナルのプログラムを用い,患者様の断酒や減酒,節酒の支援を行っています.集団精神療法の運営には,心理職だけでなく,医師,看護師,作業療法士,精神保健福祉士など様々な職種が関わっているため,多職種連携も重要な業務内容になっています.

やりがいを感じるのはどんな時ですか?

ありきたりですが,患者様の症状の回復や改善を目にした時です.目に見えて回復や改善に向かう方もいらっしゃれば,症状が複雑で,簡単には回復に繋がらないケースもあります.しかし,その中でも,自分の行った支援が,患者様の自己理解に繋がることや,日常生活の中でちょっとした上手く出来たことが見られると,粘り強く関わっていて良かったと思えます.また,アルコール依存症の治療では,一度治療が終結した方でも,再度飲酒してしまい,治療を再開するという方も一定数いらっしゃいます.そのため,長期的に関わる形になることもあります.なかなか上手くいかず,患者様も我々ももどかしい時期を過ごした分,少しずつでも回復の過程を辿っていかれた時の喜びはひとしおです.

高校生に向けて激励のメッセージをお願いします.

高校生の年代になると,自分や周囲のことなど,多くのことに考えを巡らせる時期だと思います.そんな時,心理学に触れてみると色々な気づきや生きていく上でのヒントになることがあるかもしれません.このように興味本位程度で心理学に近づいてもらうだけでも,かなり面白味のある学問だと思います.心理職に就くかどうかに関わらず,心理学に触れてみることは,皆さんの人生に役に立つことや人生を豊かにする要素がたくさんありますので,少しでも興味を持ってもらえると嬉しい限りです.

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