新たなこども家庭福祉分野の認定資格
今,わが国では「児童虐待」「ヤングケアラー」「こどもの貧困」「少年非行や犯罪」など,こどもの福祉的課題への対応が急ピッチで進められています.その一環として、専門資格「こども家庭ソーシャルワーカー」の養成がスタートしました. 「こども家庭ソーシャルワーカー」は,児童相談所・子ども家庭センター(公務員)などに勤務し,高度な専門知識や技術に基づき, 児童虐待などを防ぐとともに,こどもや家庭の幸せを力強くサポートします.
大分大学福祉健康科学部では,これまでも「子どもアドボケイト」といった児童福祉の先進的な取り組みを進めてきましたが,このたび、全国にさきがけて「こども家庭ソーシャルワーカー」を養成する体制を整え,令和6年度入学生から教育をスタートします.
児童相談所をはじめとして豊富な経験を有する教員や,児童精神科医や専門施設の現役職員を講師に招き,魅力ある教育を行います.
本コースでは,令和6年度から「こども家庭ソーシャルワーカー」の養成に向けた教育をスタートさせます(大学での養成は,今後2年を目途として国が検討を行うことが予定されています). まず,1年次前期の「こども家庭ソーシャルワーク概論」の授業では,児童養護施設で育った当事者や,現場の支援専門家が貴重な体験に基づく授業を行い,学生はその仕事の意義について学びます。また、1年次後期には,「こどもの精神医学入門」において著名な児童精神科医・小児科医が,虐待の影響を受けたこどもの精神医学についての授業を行います.
こどもの幸せのために社会に貢献できる専門家を育てたいという強い願いをもって,学生への教育にあたります.
『こども家庭ソーシャルワーカー』Q&A
虐待を受けたこどもの保護,支援が必要な子どもへの対応,こどもや保護者に対する相談支援など,こどもを支援するソーシャルワーカーを認定する新たな資格です. 増加する児童虐待の問題に対応するためには,高い専門性が求められるとして,改正児童福祉法(令和4年)に明示され,令和6年4月より制度が開始されました. この資格は,こども家庭庁が管轄する「認定資格」であり,今後,児童相談所の児童福祉司や市町村こども家庭センターの統括支援員の任用要件の一つとして位置づけられます. なお,国家資格化については,今後検討されます.
国が定めた認定機関による講習を受け,試験に合格した後,資格が得られます. なお,大学での養成については,今後,2年後を目途としてカリキュラムが検討されます.
まず,現段階では,一定の実務経験のある有資格者や現任者(指定施設において,社会福祉士・精神保健福祉士・保育士など児童福祉に係る相談援助業務に従事した者)が受講できます.
こども家庭ソーシャルワーカーは,以下のいずれかに該当する者であって,こども家庭ソーシャルワーカーの児童福祉相談支援等技能(児童虐待を受けた児童の保護その他児童の福祉に関する専門的な対応を要する事項について,児童及びその保護者に対する相談及び必要な指導等を通じて的確な支援を実施できる十分な知識及び技術をいう.)についての審査・証明事業を実施する認定法人が認めた講習の課程を修了し,認定法人が行う試験に合格し,認定法人が備える登録簿に登録を受けたものであることとする.
①社会福祉士又は,精神保健福祉士として,指定施設(児童福祉施行第5条の3に定める指定施設をいう.)において2年以上主として児童福祉にかかる相談援助業務に従事した者
②社会福祉士又は精神保健福祉士として,指定施設において2年以上児童福祉に係る相談援助業務を含む業務に従事した者(①に掲げる者を除く.)
③指定施設において4年以上主として児童福祉に係る相談援助業務に従事した者
④保育士として,保育所,幼保連携認定こども園その他これに準ずる施設において4年以上児童福祉に係る相談援助業務を含む業務に従事した者
改正児童福祉法の施行に向けた検討状況(R6.1) (cfa.go.jp) より抜粋一部改変
※こども家庭ソーシャルワーカーの要件について (cfa.go.jp)(R6.3)で詳細が確認できます
大学における養成カリキュラム(現任者講習ではない)については,国は今後(令和8年以降)検討を行う予定です. 大分大学 社会福祉実践コースでは,その結果をふまえて,現行の社会福祉士のカリキュラムを補完する形でカリキュラムを設定します. さらに,制度に先駆けて,大分大学では,本コース独自の1年次の卒業必修の科目として,「こども家庭ソーシャルワーク概論」と「こどもの精神医学入門」を開講しています. 1年次から専門的に学ぶ中で,学生のモチベーションを高めます.