社会とのつながりを支える
社会福祉実践コースは,国民の幸福実現を「本気」で願い,それを実現すべく,教育や研究,地域貢献などに「本気」で取り組んでいます.特に教育には力を注ぎ,医学部生との合同模擬カンファレンス(チュートリアル)など,独創的なカリキュラムを構築しています.福祉専門職として活躍したいというあなたの「本気」の夢を,全力でサポートします.
地域貢献においては,大分県のニーズに沿うように,学生と共に,複数の事業を展開しています.また今後は学生との研究にも幅を広げる予定です.
カリキュラム_社会福祉実践コース履修モデル(音声つき)
社会福祉実践コースの4つの特徴
誰もが過ごしやすい生活文化の追求
研究テーマ:障がい児・者におけるソーシャルワークの価値と実践
滝口 真 教授/Professor. Makoto Takiguchi
担当科目/障害者福祉
障がい児・者の課題の一つに親亡き後の生活問題があります.現在の衣食住,居場所,公共交通機関,就労等は必ずしも障がい者にとって利用しやすいものばかりではありません.障がい者に必要以上の努力を強いるのではなく,社会の側から障がい者に配慮したサービスを提供する福祉文化の醸成が求められます.国際連合による人権条約の一つである「障害者権利条約」は,「私たちのことを私たち抜きで決めないで」をスローガンとして,世界中の障がい当事者が参画し,2006年に国連で採択されました.障がいは当事者の身体内に存在するのではなく,むしろ社会や生活環境の中にこそ障がいが内在しているとの「社会モデル」の視点に立ち,乳幼児から高齢者までが安心して暮らせる地域共生社会のありようを考えていきたいものです.
安東 竜成さん
(社福)大分県社会福祉協議会
藤原 純さん
認定NPO法人 抱樸(ほうぼく)
大分大学では,2020年度より大分県と連携し「子どもの権利擁護に係る実証モデル事業」(国の児童虐待・DV対策等総合支援事業)に取り組み,2024年度より「こどもの権利擁護事業」として本格実施しています.これまで事業の一環として「子どもアドボケイト養成研修」(全15講座)を実施し,子どもと関わる仕事に携わる人々に加えて多くの学生が同研修を受講しました.「子どもアドボケイト」とは,子どもの声に耳を傾け,大人に届くように支援するとともに子どもの権利が保障されるよう社会に働きかける「意見表明支援員」のことです.研修を終えた受講者の中には,実際に「子どもアドボケイト」として県内の児童養護施設,一時保護所,里親家庭における子どもアドボカシー活動に携わる方もいます.
また大分大学では,子どもの権利擁護,意見表明支援活動に関わる周知・啓発等を目的とした学生による「子どもアドボカシーサークル」の活動も行っています.
今後実際に現地に訪問してアドボケイトとして活動する上での準備のため,また現在行われているアドボケイト活動のサポートのために子どもアドボケイトのサークル活動を行った.主に,アドボケイトとして活動を行った先輩方のロールプレイを見て学んだり,他のメンバーと協力してアドボケイトが訪問する施設に掲示するポスターを作成したりした.先輩方による面談時のロールプレイを見て,アドボケイトが話を誘導するのではなく,子どもが話せるタイミングで,話したいことを話せるようにしていることが分かった.また,子どもが話しやすい環境を作るため,アドボケイトは立ち振る舞いや言葉遣いに細心の注意を払っていることも分かり,これからアドボケイト活動を始めるにあたって子どもが関わりやすいようやわらかい雰囲気を保ちつつも緊張感を持ち続けなければならないと感じた.ポスター作成では,子どもが見やすく,興味を持てるようなデザインとなるよう工夫しつつ,安心してアドボケイトに話していいのだということが伝わるように作成した.ただ,子どもにとってよく知らない大人に話をするということにはやはり相当な勇気が必要であると考えられるため,子どもが話をすることに対する難易度を少しでも低くすることができるよう,アドボケイトにできることをこれからも考え続ける必要があると感じた.(令和3年度子どもの権利擁護に係る実証モデル事業報告書より)
大分大学では, 2021年度より大分県から「地域共生社会の実現に向けた実務者ネットワーク構築事業」の委託を受け,大学や地域の福祉活動団体,行政等からなる実務者ネットワークを構築し,多世代交流や住民相互の支え合い活動を促進してきました.これに加えて,大分大学の学生も参加する「地域点検ワークショップ」を通じて,実務者や自治体との情報共有と協議を続けてまいりました. 2023年度からは,重層的支援体制整備事業や移行準備事業に取り組む市町村職員等を対象としたオンラインセミナーを定期開催し,複雑化・複合化したケースへの対応に関する研修等を開催してきました.2024年度より大分県から「包括的支援体制構築に向けたスーパーバイズ事業」の委託を受け,包括的支援体制の構築に取り組む市町村の後方支援を目的に,県内の「参加支援,相談支援,地域づくり」分野において支援実績のある20数名の個人・団体をスーパーバイザー(SV)として登録・派遣しています.昨年度は,SV派遣(現地3回・オンライン8回),自治体職員等とSVの情報交換を目的とした連絡会を2回開催しました.今年度は,以下の事業計画に基づき,SVや自治体等との協議を行いながら,お互いの理解を深める活動を展開していく予定です.
これらの活動には,福祉健康科学部の学部生や大学院生も参加し,活発に活動しています.住民や自治体からは「学生たちの新鮮な活動力は素晴らしく,大歓迎」との評価を得ています.会議では学生も参加し,活発な意見交換が行われました.
2022年度第1回地域共生社会に向けた実務者ネットワーク会議の様子.
会議には学部生や大学院生も参加し,活発な意見交換が行われました.
2023年度には,福祉健康科学部三好研究室、経済学部石井研究室、理工学部柴田研究室が連携し,専門領域を超えた「合同ゼミナール」を大分県内で展開しました.本ゼミでは,「人と人をどうつなぎ、健康に過ごす社会を築くか」「行政では届かない公共サービスをどのように創出するか」といった課題に取り組み,ノルディック・ウォーク,地域文化の継承,孤立を防ぐ町づくりなどをテーマに教育・研究を行いました.
ゼミナール内の地域共生社会を目指す活動の一環で,大分県臼杵市野津町の「伝統文化継承」を目的にリーフレットの作成を行いました.リーフレットのモチーフは野津町出身で,とんち話で有名な「吉四六さん」です.当初は,野津町の若者世代,子どもたちをターゲットとしていましたが,現在は,臼杵市のみならず東北の地域の方々との交流の際にも活用されています.今後は文化を媒介として,地域間の交流を活性化させることを目標に活動を展開していきたいと思います.
当法人は,福祉を取り巻く環境の変化により福祉ニーズの複雑化,人々の価値観が多様化するなか,児童福祉・障害者福祉・高齢者福祉・生活困窮者支援など社会福祉法人としての責務を果たしてきました.
また,これまで以上に地域福祉の中心的な担い手となり,多様で複雑化している福祉ニーズに対応するためには,ミクロ・メゾ・マクロソーシャルワークの価値・知識・技術が求められます.
そして,その価値・知識・技術を活かし,実践していくことが大事になります.特に対人援助はこれで終わりということは少なく,課題に対して継続して取り組むことが必要です.
大分大学(福祉健康科学部)出身の職員は,自ら考え行動する姿勢や更に何か新しいことにチャレンジしようとする意志があり,今後の成長に期待をしています.
大学には,ソーシャルワークの価値・知識・技術の習得はもちろんのこと,何事にも諦めない姿勢で困難を乗り越えていく実践力のある学生を育てていってほしい.
社会福祉法人みずほ厚生センター事務局長
髙橋 智秀(前大分県社会福祉士会長)